読読日記

経営、経済、金融を中心とした読書日記

『説得は「言い換え」が9割』向谷匡史 光文社新書

ビジネスに限らないだろうけど、説得で人は動かない。本当の意味では動かない。人が動くのは自発的なエネルギーによるものであり、納得しない限り、その動きは一時的な、表面的なものに過ぎない。

 

組織管理₍特に営業組織⁾において、「詰める」カルチャーがある。現場の一挙手一投足まで細かく管理する。数字を詰め、プロセスを詰め、精神性を詰める。現場は詰められる恐怖から、とにかく数字を達成しようと動く。なりふりを構わず動く。数字が達成されることもあれば、目標が達成された様な数字が作られることもある。

 

某大手企業では「チャレンジ」と称した一連の不適切会計なる不正、粉飾が行われたが、「詰める」カルチャーの弊害が表出した事例に過ぎない。

 

結論を自分自身で出させる、自己説得

 

「詰める」カルチャーの組織では、「幾らやるんだ」といった形で自ら目標を宣言させることが多い。どんなに言わされた数字であっても、「言った以上は自分の言葉に責任を持て」と、追いつめられる。そして「できない自分は人としてダメなんだ」と自らを責める様になる。あ~、想像しただけで気分が悪くなる。こんなの借金取りと一緒じゃないか。

 

課題があるならそれをどう乗り越えるかというところに発展がある

 

ケネディ大統領の、「国があなたの為になにをしてくれるのかではなく、あなたが国の為に何をできるか」といったセリフを思い出した。因みに、課題があるなら~といった上記発言は、橋本徹-大阪市長のセリフとのこと。名セリフと捉えるか、視点をずらす発言と捉えるか。視線を将来に向けるという点では、建設的な発言と言えるけど、文脈次第では、責任を感じさせない無責任発言とも取れる。

 

私の立場ならどうしますかという言葉で同情を喚起する

 

「そんなの知らないよ」という返しも想定されるけど、もし何々なら…といった仮定をおいた言い回しは、相手の本音が出易いやり取りではある。同情を喚起するかどうかはシチュエーション次第。ただし、仮定の話だと、組織としての建前の主張ではない、個人としての主張を聞き出すことができる。「あくまでも個人の意見ですが~」といった前置きをおきつつ本音が出てくる。

 

★★☆☆☆

テクニックとしては面白いけど、相手に言葉を届けたいし、納得してほしい